これは割と前の話になりますが、
味の素が、傘下に収めていたカルピスを、アサヒグループHDに売却しました。
これによって、アサヒの清涼飲料事業は、
伊藤園を抜いて業界第3位になります。
(1位はコカ・コーラ、2位はサントリーです)
この動きの両者の目論見は、
味の素側は本業のアミノ酸関連事業への
投資集中に向け、関連性の薄いカルピスを売却し、
アミノ酸関連のM&Aや技術買収への資金確保を意図したもので、
(約1200億円の資金を確保することになります)
アサヒ側は、予てより「三強に入らないと戦えない」
と考えていた清涼飲料事業で「カルピス」という
ブランド力と乳酸菌の技術を手に入れ、
国内事業の基盤強化を図りたいという意図があったと思われます。
味の素は食品大手として、国内の競合よりも
スイスのネスレなどの海外競合を意識し、
売上高営業利益率、ROEなどの財務指標の改善を
進めています。その中でカルピスは1106億円の売上高に対し、
45億円しか営業利益をあげられていないこと、
ブランド力だけではこれ以上の売上高拡大に限界があること
等から今回売却に踏み切ったのではないかと思います。
アサヒの競合であるキリンビールも
約2年前にサントリーと提携が破談になったりしましたが、
シンガポールの同業メーカーに出資したり、
海外への進出の足がかりを作ろうと必死です。
カルピスのようにすでにブランド力があり、
国内で一定規模の売上が見込める企業はいくつか
あるものの、国内市場はデフレ基調の継続、
PBによる価格競争、第三のビールの台頭など
市場規模の縮小圧力になりうる要素はたくさんあります。
個人的には、今回の売却は味の素にとっては非常に
意味のあるものになったのではないかと思います。
味の素には強みとなる技術があり、それを武器に海外に展開できます。
しかし、アサヒとキリンには海外に展開する際の武器がないのです。
海外ではバドワイザーのようにもっとグローバルにブランドが確立された
製品がいくつもあります。価格もほとんど変わりません。
だからM&Aをしていくしかないのです。
国内の市場は尻すぼみになり、
比較優位になれるような強みもなく、
財務状態も芳しくない(=M&A資金に限界がある)
という苦しい状態の飲料大手二強は
今後どのように活路を見出していくのか、
一方、資金を手に入れ、元々実質無借金状態で
13年までに約3000億円の営業キャッシュフローを創出でき、
強みとなる技術をもっている味の素は
どこまで海外で戦えるのか、
今回の買収に絡んだ二社は明暗が分かれるような気が
個人的にはします。あくまでも一介の大学生の私見でしかありませんが。
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